お客様の紹介
継続的に市場に生乳を供給し続ける
オーストラリア人はチーズが大好きです。チェダーチーズ、ストリングチーズ、クリームチーズから、職人のチーズや瓶入りチーズまで、同国の生乳生産の 1/3 はチーズの生産に費やされています。
そのすべては、230 年以上前の最初の植民船団の一部として英国ポーツマスから運ばれて来た 11 頭の牛から始まりました。その植民船団は 252 日間、2 万 4,000 キロメートルを航海し、オーストラリアで最初のヨーロッパ人の入植地、ニューサウスウェールズに到着しました。牛は上陸後、当然のことながらすぐさま森の中に入っていきました。そして繁殖し、6 年後には 61 頭の群れに増えました。現在のオーストラリアには、160 万頭以上の群れと、130 億ドルの乳業を構成する 5,700 の酪農場があります。
Bega Cheese 社はチーズ製造のエキスパートであり、同社の主力ブランドである Bega は、オーストラリアの小売チーズ市場の 15.7% を占めています。このほかにも、世界的に有名な Vegemite スプレッド、Picky Picky ピーナッツ、Zoosh French オニオンディップなど、他の象徴的なブランドもあります。また、Bega 社の製品を好んでいるのはオーストラリア人だけではありません。収益の約 1/3 (2019 年現在) は、世界中の約 40 か国への乳製品の輸出から得ています。
Bega Cheese 社は、独自の課題に対処するために、サプライチェーンの効率を改善し、効率性と可視性を高めたいと考えていました。生乳は新鮮な状態で、農場から工場に出荷され、チーズやその他の製品に迅速に加工され、国内外の最終消費者に再度出荷されなければなりません。このため、サプライチェーンは非常に迅速かつ効率的である必要があります。
従来の方法はほぼ完全に手作業によるものでした。農家は生乳の品質をテストし、貯蔵タンクの充填レベルを自身でチェックしてから、あらゆるデータを Bega Cheese 社に電話で報告しなければなりませんでした。余剰生産が発生した場合、Bega Cheese 社は、手配できる場合はタンクローリーを急いで用意し、そこに送る必要がありました。生乳タンクローリーによる輸送では、生乳が温かくなりすぎたり振り混ぜられた状態になることがあり、品質が不安定です。つまり、サプライチェーンはきわめて迅速かつ効率的でなければなりませんでした。
Bega Cheese 社はそのソリューションとして、IoTを使用することにしました。同社のサプライチェーン担当 GM である Adel Salman 氏は、IoT が優れたソリューションになることを知っていました。彼は、会社のサプライチェーン (インバウンドとアウトバウンドの両方) でリアルタイムデータを使用することの可能性を見出していました。
彼は IoT プロジェクトを立ち上げた経験がなかったため、パートナーを探す必要がありました。「乳製品のサプライチェーンの専門家である私たちが必要としていたのは、IoT に関する専門知識とリソースを提供し、業界における問い合わせ先となり、政府の支援を得るためのサポートができるパートナーでした」と Salman 氏は語っています。
その後彼は、スウィンバーン工科大学のことを知りました。同校の IoT ラボとインダストリー 4.0 イニシアチブは、Bega 社にとって理想的な選択肢でした。スウィンバーン工科大学は、プロジェクトを立ち上げるための多くの手間のかかる作業を行いました。これには、連邦政府の Cooperative Research Centres Projects (CRC-P) の研究助成金に対する申請もありました。
オーストラリアの乳業の生産性と競争力を最適化するプロジェクトは、当初は Bega Cheese 社とオーストラリアの生乳サプライヤ 3 社が共同で実施しました。その後、100 社以上のサプライヤに拡がりました。新しいセンサで使用するネットワークテクノロジのタイプとして NBioT が選択されました。
次にプロジェクトで必要になったものは、小規模ですぐに開始でき、Bega Cheese 社の 100 社以上のサプライヤを対象としてスムーズに拡張できる IoT プラットフォームでした。Software AG はここで採用されました。Cumulocity IoT プラットフォームによってこの 2 年半のプロジェクトをスケールアップしたのです。
スウィンバーン工科大学の IoT ラボのディレクタおよび Bega Cheese 社のプロジェクトリサーチャである Dimitrios Georgakopoulos 教授は、次のように語っています。「Cumulocity IoT は、このプロジェクトに必要なアジリティとスケーラビリティを備えており、私たちは機能の構築に集中できました」。
最初のフェーズでは、サプライチェーンの最初の 3 つとなる Bega の農場にセンサと通信装置を設置しました。そして Bega Cheese 社はすぐにデータの使用を開始して、より迅速に意思決定を行い、現場で対応し、輸送を最適化し、廃棄物と移動距離を削減します。
貯蔵タンクがどの程度一杯になっているかは、自動的に測定できます。満杯の場合、IoT プラットフォームは農場から生乳を集荷するための輸送要求をトリガーします。これにより農家は電話で報告しなくて済むようになります。また、貯蔵タンクの温度と洗浄頻度を監視して、細菌数が少ないことを確認することもできます。
タンクローリーを監視して、タンク内の細菌数と積荷の温度を確認できます。Bega Cheese 社は、リアルタイムデータを使用して、生乳タンクローリーが最適なルートを取るようにし、集荷する生乳が十分にない農場には立ち寄らないようにすることができます。また、トラックが工場の貯蔵所にいつ到着するかを把握し、より良い生産スケジュールを組むことができます。
乳生産では、天候が乳量に影響する要因の 1 つとなります。牧草地が緑豊かになるような湿度 (降雨) と外気温の場合、乳量は多くなります。Bega Cheese 社は、リアルタイムデータと履歴データを使用して、機械学習モデルでより多い乳生産量を予測できます。これにより、より多くの集荷を自動的にスケジュールし、生産量の増加を事前に計画することができます。
「IoT センサによって収集されたリアルタイムの温度/湿度データから傾向を把握して、非常に正確な生乳供給を予測することができます」と、Georgakopoulos 教授は語っています。現在、このデータは、過去数週間の集荷から得られるデータに基づいて手作業でのみ収集されています。
農家は、電話でデータを伝えたり、集荷依頼をリクエストしなくて済むため、時間を節約できます。また、同社は各農場の乳量と乳質をより迅速に把握できるため、農家はより早く支払いを受けることができます。
生乳の産地とその品質を知ることは重要であると Salman 氏は語っています。「乳製品の産地は広範囲にわたりますが、今では生乳を農場から工場、そしてそれ以降まで追跡することができます」。プロジェクトの第 2 段階では、生乳の状態と品質を測定し、製造プロセスのどこでどのように使用するかを決定します。
最終的には、工場から顧客までのアウトバウンドサプライチェーンを最適化する予定です。これは輸出物流にも適用されます。Bega Cheese 社は、船のコンテナの状態の監視も行いたいと考えています。コンテナの出発/到着の時期を把握し、輸送行程全体にわたって適切な温度が維持されるようにするためです。
Cumulocity IoT により、同社は生産性を向上させた上にサプライチェーンのコストを削減することができるとともに、オーストラリア人 (およびその他の国の人々) は大好きなチーズを確実に入手できるようになります。
この Bega Cheese プロジェクトは、乳質、乳量、および物流に関連する既存の非効率性に加え、Bega Cheese 社の上位 100 サプライヤを含むインバウンドミルクサプライチェーンのライブデータの欠如による競争上の障壁にも対処します。サプライチェーンの生産性と競争力を強化する上での重要な課題は、ジャストインタイムでの生乳の集荷、加工要件、その規模の大きさです。
ジャストインタイムの要件は、生乳の品質と組成の変動性 (時間、貯蔵温度、タンパク質および脂肪含有量によって異なる) と、利益を最大化するための集荷および加工に関するニーズに対処するために重要です。ジャストインタイムの要件を完全に満たすには、サプライチェーンは品質と組成を考慮しながら、利用可能な生乳をすべて集荷し、生乳から最高の価値を得られるように加工する必要があります。
これらは、新しい IoT センサと市販の IoT センサを 100 の酪農場に配備して生乳の量と品質を継続的かつリアルタイムに監視すること、輸送コストを最低限に抑えて生乳集荷プロセスを順守した上で高品質の生乳を選りすぐり、生乳の集荷プロセスとスケジュールを最適化すること、そして信頼性の高い生乳供給予測を行うことで実現できます。