IoTとは？IoT実践ガイド

IoT は、企業の資産やプロセス、ビジネス、顧客がどのように運用されているかを詳細に把握できる、スマート接続デバイスを を構築するための基盤を提供するものです。IoTの用途は多岐にわたり、あらゆるビジネスモデルや業界において、適切なアプローチをとれば大きな利益が得られます。

たとえば、小売業者はIoTを利用してスマートオーダーを行い、無駄や過剰在庫を防ぐことができます。また、ショッパーアナリティクス（店舗向け分析）を利用して、売上向上のために店舗レイアウトを最適化したり、店舗所在地付近のユーザーにアプリを通じて通知を送信したりすることができます。

通信事業者は、機器をリモートで監視し、メンテナンスを予測して、通信サービスを利用している顧客の技術的な問題や予期せぬダウンタイムを防ぐことができます。

物流会社は、自社の車両、在庫、人員を追跡し記録することで、効率化を図り、納期遅延による商品のロスを減らすことができます。

IoT テクノロジーを組み込んだ医療機器では、患者や医療従事者が慢性疾患をリアルタイムで監視できるため、患者はより自立した、不安の少ない生活を送ることができます。

エネルギー企業は、水力発電タービンから風力発電所、水道メーターに至るまで、あらゆる「モノ」をつなぐIoTの取り組みによって、効率性と サステナビリティ を加速させることができます。センサーが組み込まれたインフラストラクチャにより、機器の変化をリアルタイムで検知し、停電の防止、職場の安全性向上、手戻りの防止を図ることができます。

ユーティリティ企業は、エネルギー消費をリアルタイムで監視し、必要なときに必要な場所にエネルギーやその他の製品を分配することで、スマートグリッドの取り組みを強化し、停電を減らすことができます。

製造業者は、接続された機器からのセンサーデータに基づいて、プロセス効率を向上させ、ダウンタイムを削減し、機器のパフォーマンスを把握することができます。

これらは、あらゆる業界の組織がIoTの知見情報を得るメリットを活用している例のごく一部にすぎません。

製造業が重視されている現在では、業務効率とデータは密接に関連しています。そこで登場するのが、IIoT（インダストリアルIoT）なのです。

IIoT（産業用IoT） とは、産業環境における IoT テクノロジーの応用を指します。IIoT のユースケース、機能、要件は、そのコネクテッドデバイスの広範なネットワークや関連するデータ量により、一般に他の業界の IoT アプリケーションよりも高度になっています。

IIoTを導入すれば、製造業者はリアルタイムのデータ分析とモニタリングを使用して、より良いオペレーションを行い、俊敏性、最新の情報、制御を維持できるようになります。IIoTを推進しているのは機器メーカーで、「従来の製品」から「スマート製品」の製造へと移行しようとしています。

スマートコネクテッド製品 により、メーカーは新しい革新的なソリューションを顧客に提供でき、ビジネスモデルを変革し、さらに大きな価値をもたらすことが可能な Equipment-as-a-Service を提供できます。

IoT Analytics社のレポート Equipment as a Service Market Report, （EaaS市場レポート）によると、EaaS（Equipment-as-a-Service）の市場規模は2025年までに1,310億ドルに達し、2019年から6倍に増加すると予想されています。やがて、EaaSビジネスモデルへの加速は、競争に先んじるためではなく、競争を維持するためのものになるでしょう。 McKinsey社による機械と産業オートメーション の調査回答者の95%は、将来の成功のためにビジネスモデルを変更する予定であると答えています。

製造業者がスマートコネクテッド機器を好んで選択するのは、そのメリットを生産プロセス全体で実感できるからです。インサイトを活用することで、ダウンタイムの削減や効率化を図ることができ、そのメリットは1種類の機械から始まり、生産ライン全体に拡大します。また、機器の生産業者側（プロバイダー）は、スマートコネクテッド製品を提供することで、ビジネスを強化する多くの機会を創出しています。

製造業者は通常、IIoTに次のようなメリットを期待しています：
 

ダウンタイムの削減

自動車業界の上層部を対象とした調査によると、生産ラインが停止すると、平均的な自動車メーカーは1分あたり22,000ドルの損失を被り、全体として、計画外のダウンタイムによって産業メーカーには年間500億ドルもの損失が発生します。オペレーターは、IIoTを使用して、機器のパフォーマンスを24時間365日把握し、不測の事態に即座に対応する能力を備え、コストのかかる予期せぬダウンタイムに対処しています。IIoTにより、メンテナンスを予測および計画し、運用上の問題を発生前に検出し、インシデントの発生原因を正確に把握し、特定のパラメータが合致した場合の資産に対するアクションを自動化できます。つまり、これらすべてによって、稼働率とパフォーマンスの向上が約束されるのです。

サステナビリティの強化

英国Transforma Insights社のサステナビリティレポートによると、ビジネスリーダーの95%が、電気や燃料の節約はIoT対応アプリケーションの導入によるものと考えています。IIoTにより、製造エネルギーと材料消費の透明性が実現し、より持続可能でスマートな意思決定を行うための専門知識が得られます。リモート監視、スマートフィールドサービス、パフォーマンス管理といった従来のIIoTユースケースの展開により、エネルギーの節約と組織のカーボンフットプリントの削減が可能になります。

アウトプットの質の向上

生産ラインの高度なインサイト、自動化、リアルタイム制御により、IIoTは生産ラインから出荷される全製品の一貫性を確保し、欠陥製品の数を減らすことができます。

安全性の向上

リモートで機器を監視・管理できれば、機器に異常が発生したときに、いち早くそれを感知することができます。また、危険な環境では特に重要なことですが、従業員が現場に行く回数を減らすことができます。

機器プロバイダーは主に、スマートコネクテッド機器を提供することで得られる下記のメリットに焦点を当てています：

新しい特徴や機能によって製品を差別化する

プロバイダーは、特に顧客の資産の使い方を理解することで、デジタルサービスを通じて新しい、回復力のある収益源を創出し、付加価値のある機能をより迅速に開発できます。また、エネルギー効率は、より環境に優しい製品を求める顧客と、エネルギー費用の削減を目指す顧客の両方にとって魅力的です。

製品の使用状況をより深く把握する

生産環境での機器の使用状況について正確なデータを収集し、顧客が実際に製品をどのように使用、あるいは誤用しているのかを把握し、それに応じて製品を最適化します。

新たなビジネスモデルと新たな収益源を開拓する

機器メーカーはIIoTを利用して、EaaS（Equipment-as-a-Service）のような、製品の性能を顧客のニーズに合わせることに焦点を当てた新しいサービスベースのビジネスモデルを実現しています。この新しいビジネスモデルは、減少しつつあるハードウェア収益への依存を、より収益性の高いアフターサービスや部品にシフトします。

CX（カスタマーエクスペリエンス）を向上させる

IIoTで競合他社と差別化を図り、顧客満足度を維持します。Bain & Company社によるレポート「Global Machinery & Equipment Report 」によると、付加価値の高いIoT対応サービスを導入している機械メーカーは、そうでない企業に比べて８倍の株式利益をもたらしています。機器メーカーは、パフォーマンスやセキュリティのためのソフトウェアやファームウェアの更新など、顧客が時間をかけたくないタスクを処理しながら、機器の状態の詳細な概要を顧客に提供できます。

IIoTに接続された機器は、正しく導入されることで、機器メーカーとそれを使用する製造業者の双方にメリットをもたらします。IIoTには数多くのユースケースがあり、以下に一般的な実例を紹介します。

リモート監視

IoTリモート監視 は、コネクテッドデバイスを使用して、機器の使用とパフォーマンスに関してリアルタイムのインサイトを取得します。これらのインサイトにより顧客は、最も重要な新製品機能の開発を加速させることができます。

また、リモート監視により、製造業者、電力会社、物流業者、その他の業界を問わず、機器ユーザーのメンテナンスとダウンタイムにかかるコストを削減できます。 McKinsey社によると、資産状況のリモート監視により、メンテナンスコストを30％、機械のダウンタイムを50％削減することが可能です。

英国ロンドン市が以前、2020年までにロンドン中心部に世界初の超低排出ゾーンを設定するという意欲的な目標を掲げましたが、その際に自動化、電動化、デジタル化のリーダーであり、大型車両や機器のテレメトリのスペシャリストである Sensor-Technik Wiedemann (STW)—社が取り組みに参加しました。

この意欲的な目標達成のため、STW社は5,000台以上の市バスから排出される煤粒子（PM）と窒素酸化物（NOx）のリアルタイムデータを取得するリモート監視を利用しました。このバスデータへの即時アクセスにより、ロンドン市は、ボタンをクリックするだけで、排出ガスデータから、車両の故障、GPSベースの位置情報、燃料消費量まで、すべての車両の状況をリアルタイムで把握できるようになりました。

これらのリモート監視機能により、ロンドン市は実際にバスのPMを99%、NOxを90%削減することができました。また、自動故障警告や予知保全 が可能になり、バス路線はこれまで同様にスムーズで効率的な運行を確保しています。

リアルタイムアラート

特定のイベントが発生する前に、それを通知するリアルタイムアラートを自動化します。このアラートは、温度が高すぎる、圧力が低すぎるなど、機器の故障の兆候を検知し、リスクを最小限に抑えながらダウンタイムを大幅に短縮します。

世界初のフル電動自動車でレーシングシリーズを運営するElectric Racing Academy (ERA), は、電気自動車を、コネクテッドインテリジェンスを備えた車両に変えたいという意欲がありました。これを実現するためにERAは、IoTテクノロジーを用いて、流動的なリアルタイムのレーシングデータをSoftware AGのCumulocity IoTプラットフォームに. に集積しました。速度、加速度、トルク、RPM、温度などに関するデータが継続的にストリームされるため、ドライバーやコーチは、天候や回生電力レベルなどのパラメータについてリアルタイムのアラートを設定できます。これらの通知により、チームは安全性とパフォーマンスの両方に関連する決定を瞬時に下すことができます

デジタルツイン

IoTデジタルツイン は、単一のデバイスから製造生産プロセス全体まで、実世界の実体をデジタルで表現したものです。数百もの資産があって、それぞれにさまざまな種類のセンサーが搭載されている場合でも、デジタルツインを作成することで、単一のダッシュボードから分散した資産の管理・監視・テストを実行できるようになります。.

デジタルツインは、過酷なリモート環境で微調整されたマシンを操作する場合に便利です。たとえば、風力タービンのデジタルツインを導入すれば、24時間365日、風力タービンの同一のビジュアルにアクセスできます。そして、風や波、温度などの環境要因でタービンが損傷していないかどうかを監視できます。デジタルツインを使用すれば、風力タービンを損傷する前に停止させるなど、物理的な機械に対して操作を行うことも可能です。

自動車向けターンキー自動塗装プラントの設計・施工で世界をリードするGeico大気社グループ (Geico Taikisha Group)—は、デジタルツインを活用し、詳細な生産データへのアクセスによって顧客とつながり続けています。これにより、同社は機械のパフォーマンスや一般的なエラーを判断し、情報をさらに利用して顧客の塗装プラントのパフォーマンスを向上させることに成功しました。

Geico社の顧客も、自社の機械でこのデジタルツイン機能にアクセスします。これにより、潜在的な効率性、脆弱性、そして最も顕著なコスト削減のためのライブシミュレーションを作成できました。

このような透明性により、顧客はメンテナンスとダウンタイムを予測して支出を削減することができました。また、スマートエネルギー管理機能により、顧客はデジタルツインを利用して、サステナビリティとさらなるコスト削減の取り組みのために、リソース使用率を詳細に最適化することが可能です。

スマートフィールドサービス

フィールドサービスでは、機器プロバイダーの従業員が顧客先に出向いて、機器の設置や修理、部品交換、定期メンテナンス、コンサルティングなどのサービスを行います。そのため、機器メーカーは、顧客の機器を診断・修理・改善するために、技術サービスプロバイダーのチームを管理する必要があります。

スマートフィールドサービス は、アナリティクス機能を使用して、現場の機器から収集されたIoTデータを理解・判断します。プロバイダーはインサイトを利用してフィールドサービスを特定、スケジュール、計画、実行し、顧客と情報を共有することで、将来必要となるメンテナンスとサポートについてより正確に判断することができます。つまり、技術者は必要なときにのみ現場を訪問し、訪問する際には、最初の一回で作業を完了させることができます。

SMC社 は、空気圧縮装置の製造を専門としています。「空気にコストがかかる」ビジネスにおいて、同社はIoTテクノロジーを拡張し、同社とそのエンドユーザーから、漏れから生じる空気損失に関連するコストを削減したいと考えました。

SMC社は、漏れの問題を解決するために設置場所に出向くことなく、圧縮空気の漏れがどこで発生し、どのように問題を軽減できるかを測定し、エンドユーザーに表示することができます。出張は不要です。SMC社にとって、スマートフィールドサービスは、顧客の計画外のダウンタイムのリスクを排除し、工場管理者が迅速かつリモートでメンテナンスを実施できるようにして、関係者全員にとってのエクスペリエンスを向上させます。

アナリティクス

IoT アナリティクス を活用すれば、IoTデータから得られる強力なインサイトを把握し、予測し、それに基づいて行動することができます。次の３つのカテゴリに分類できます。

• 履歴分析（ヒストリカル・アナリティクス）：過去に起きたことを把握するために使われます
• ストリーミング分析 （ストリーミング・アナリティクス）：現在起きていることを把握するために使われます。
• 予測分析（プレディクティブ・アナリティクス）：将来起こりそうなことを把握するために使われます。

IoTの経済効果に関するForrester社のレポートによると、高度なアナリティクスにより、機器の耐用年数を200%延長し、電気料金を最大20%削減可能と推奨することができます。

Huntsman社は、差別化化学品や特殊化学品の製造・販売を行う世界的な大手企業であり、アナリティクスを活用して生産プロセスを最適化する機会を特定しています。同社は、強力なセルフサービスのアナリティクスツールである TrendMinerを使用して、日々のデータ、新しいセンサーデータ、ラボ分析データの組み合わせにより、オペレーションの可視性を強化しました。

高度な分析により、Huntsman社のプロセス専門家は、プロセスの設定値を微調整して、製品に含まれる不純物レベルを積極的に最小化しています。たとえば、予測分析により、最終製品に含まれる加水分解性塩化物レベルを予測し、製品品質への影響を軽減できるようになりました。また、ストリーミング分析により、24時間365日の品質管理が可能になり、ラボリソースの需要を10%も削減できました。

予知保全

予測分析により、製造業者は 予知保全サービスを提供できます。それによって顧客は、稼働率を最大化し、メンテナンスニーズを予測し、メンテナンスコストを削減できます。

予知保全サービスは、初回修理率、サービスコスト、顧客生涯価値など、フィールドサービスにおける重要な効率指標を向上させます。また、コストのかかるダウンタイムを防ぐことで、顧客ロイヤルティと満足度を高めることができます。

世界有数の機械・プラントエンジニアリング企業であるDürr社は、IIoTアナリティクスが自動車塗装業界に革命をもたらすことができると考えました。同社のロボット塗装機では、気流の形成を担う数十個の小さなエアノズルが、時間の経過とともに詰まってしまいます。つまり、洗浄の必要性の有無にかかわらず、洗浄サイクルが固定されているので、欠陥の検出前に複数の車体の塗装不良が発生することがありました。

Dürr社は、ロボットに数百個のIoTセンサーを搭載して、センサーデータに高度な分析を適用し、小さなエアノズルの予知保全を実行しました。その結果、ノズルは必要なときだけ洗浄され、詰まりを防ぐことができるようになりました。また、データに裏打ちされた正確な予知保全計画のおかげで、シェーピングエアノズルの詰まりによる塗装不良は発生しなくなりました。

パフォーマンス管理

IoTパフォーマンス管理により、運用パフォーマンスを向上させることができます。OEE Overall Equipment Effectiveness は、機械の稼働率、性能、品質を測定するための信頼できる基準です。

接続された機器からの豊富なデータストリームにより、正確かつ容易に運用パフォーマンスを管理することができます。 OEE 計算 を使用して機器の性能を定量化し、機械の耐用年数を延ばすこともできますので、機器メーカーにとっては、顧客が機器を最大限に活用して価値を得られるようにすることが可能です。顧客にとっては、自らOEEを確認して、生産ラインの流れを維持するためのスマートで迅速な意思決定を行えます。

Ashland社は当初、建設資材を製造していましたが、製品の軸足をパーソナルケアや医薬品に移しました。しかし、この転換により新たな課題が生じたのです。

同社には、当初「解決不可能」と思われる生産問題が発生し、品質と収益性を高めるために業務効率化が急務であると実感しました。同社は、IoTパフォーマンス管理を利用して、生産上の問題を解決し、品質管理を強化し、適正製造基準（GMP）の生産スループットを向上させました。これは、TrendMinerが装備する使いやすいダッシュボードで実現され、誰もが機器やプロセスのパフォーマンスを容易に把握できるようになりました。最終的に同社は、根本原因分析を使用して、上流の未知の相関関 係を特定し、その結果に基づいてプロセスを調整しました。その結果、GMP製品の生産は目標どおり70%から95%に増加しました。

IoTは組織を変革する可能性を秘めていますが、課題がないわけではありません。多くのIoTプロジェクトは期待を満たしておらず、完全に失敗に終わることも多々あります。実際、 Beecham Research社 によると、全IoTプロジェクトの75%近くが成功とはみなされていません。成功を妨げているものには、技術的な観点とビジネスの観点の両方から、いくつかの形態があります。ここでは、組織がIoTの取り組みで直面する一般的なIoTおよびIIoTの課題をいくつか紹介します。:

IIoTの技術的課題

セルフサービスによるデバイス管理

デバイス管理とは、デバイスの初期接続や設定など、接続されたデバイスのライフサイクル管理を指します。このデバイス管理のプロセスは、特にデバイスが数千台もある場合は、単純ではありませんので、これらのデバイスの接続性を管理することは、新たな問題を引き起こすことになります。

セルフサービスによるデバイス管理は、ベンダーから独立して運用するのに役立ちますが、高度なソフトウェアエンジニアリングの専門知識がなければ、依然として課題が生じてしまいます。特に、IoTに取り組みだしたばかりで、専用のソフトウェアチームを立ち上げずにIoTサービスを顧客に提供しようと考えている企業にとっては、フラストレーションが溜まりやすい状況となります。

そのためのソリューションは何でしょうか？IoTデバイス管理プラットフォーム なら、デバイス接続と管理機能があらかじめ統合されており、管理を簡素化できます。適切なプラットフォームは、ノーコード機能を提供し、計画から初期接続、監視、メンテナンス、廃棄に至るまで、デバイスやセンサーのライフサイクル全体を、簡単かつ一元的に管理および監視ができるべきなのです。

デバイスの更新

ソフトウェアやファームウェアの更新をIoTデバイスに展開することは簡単ではありません。その何千、何百万というIoTデバイスを確実に更新することはさらに大変です。

IoTプラットフォームは、セキュリティ脆弱性へのパッチ適用とコード更新のためのデバイスへのファームウェアやソフトウェアの展開を簡素化しますが、多くのプラットフォームでは、サイバーリスクの低減と信頼性の向上を目的とした重要な更新がデバイスに反映されているかどうか、ユーザーが確認できない場合が多々あります。

さらに悪いことに、更新に失敗すると、かなりのレベルの手作業が必要になり、IT管理者の貴重な時間を奪ってしまうこともあります。プラットフォームは、ステータスを可視化しながらエラーを回避するために、管理された段階的な方法で効率的に多数のデバイスを更新できなければなりません。

スケーラビリティ

According to Beecham Research社によると、IoTプロジェクトに携わった人材の60%が、スケーラビリティに問題があったと回答しています。

IoT対応サービスは、組織が顧客にサービスを提供する上でさらに重要な役割を果たしており、スケーラブルなIoTサービスを社内外の顧客に提供することが課題となっています。さらに、顧客によるIoTサービスの導入が長期化すると、多くの組織は、IoTプラットフォームのコストを導入に応じて拡張できない状況に陥ります。

そのためのソリューションは、長期的なビジネス目標をサポートできる 信頼性の高いスケーラブルなIoTプラットフォーム であり、導入に応じて拡張できる価格モデルも提供しています。これにより、組織は極端に高額な先行投資をしなくても、新しいコンセプトやビジネスモデルを実験することができます。

信頼性

IoTのメリットであるダウンタイムの削減、パフォーマンスの向上、有益なインサイトは、IoTシステムが信頼できる場合にのみ得られるものです。正確かつ真のリアルタイムデータであるという信頼がなければ、インサイトや意思決定にはつながりません。

IoT は、ビジネスプロセスおよび顧客が使用する製品において重要な役割を果たします。 IoT ソリューションがエンタープライズグレードであることを確認し、そうでない場合は、改善計画を立てる必要があります。

企業は、レガシーIoTプラットフォームよりも高いレベルの品質と回復力を必要としています。また、IoT専門の評価企業Machnation社のホワイトペーパー「 Six Steps to Replacing Your IoT Application Enablement Platform（使用中のIoTアプリケーションイネーブルメントプラットフォームを置き換えるための6つのステップ）」によると、あまりにも多くのIoTプラットフォームが、ビジネスに不可欠なエンタープライズIoTアプリケーションや一般的なIoTワークフローのサポートに必要なサービスレベルを提供できていません。

この課題を克服し、究極の信頼性、セキュリティ、パフォーマンスを備えたエンタープライズグレードのIoTを実現する方法については、 Machnation社のホワイトペーパー で、IoTプラットフォームの切り替えに成功するための6つの重要なステップをご覧ください。

セキュリティ

セキュリティはすべての新しいテクノロジーに共通する課題であり、IoTも例外ではありません。データの損失や IoTセキュリティ インシデントが発生すると、他のシステムの侵害やダウンタイムにつながるおそれがあります。

独自のIoTシステムを構築して実装している組織には、競合する要求が交わるところにセキュリティの課題が待ち受けています。プラットフォームは、適切な人材が適切な情報にアクセスできるようにしながら、同時に防弾性を備えていなければなりません。ところが、セキュリティ対策が組み込まれていると謳うプラットフォームでも、新たな脆弱性や、セキュリティ技術を向上させる方法に気付かないままでいる可能性があります。

コードのすべての行に エンタープライズグレードのセキュリティ が組み込まれた IoT プラットフォームが必要です。

適切なIoTプラットフォームを使用すれば、IoTデバイスの管理とセキュリティ確保がはるかに容易になります。セキュリティ標準を適用し、セグメンテーションと暗号化を実装することでデータを保護し、特定のデバイスやデバイスグループへのアクセスを容易に管理・更新・アップグレードできます。これらの対策により、デバイスとデータが常に適切なセキュリティ機能を備えているという安心が得られます。

アナリティクス

Forrester Consulting社の IoTの経済効果によると、Software AGのCumulocity IoTプラットフォームを導入した組織は、高度なIoTアナリティクスソリューションにより、収益が３年間で最大125%増加しています。

高度なアナリティクスは、企業と顧客を理解し、機器とプロセスのパフォーマンスを向上させることができます。また、高度なアナリティクスを提供することで、スマート機器メーカーは新たな収益源を開拓できると同時に、顧客は機器への投資から最大限の価値を実感し、信頼性を築くことができます。

しかし、アナリティクスの提供と展開は、メーカーと顧客の双方にとって課題となっています。ソリューションがクラウドやエッジコンピューティングの期待に応えられない場合、得られた「インサイト」は期待したほどリアルタイムでも、透明でも、価値あるものでもないことがあります。IoTアナリティクスはリモート監視や予知保全など、重要なIoTユースケースを実現する機能であるため、これは特に悪影響を及ぼします。

さらに、収集したIoTデータを最大限活用するのに必要な統合やデータアナリティクスに関する専門知識を持つ企業も少ないのが現状です。そのソリューションとなるのは、あらゆるIoTエコシステムの高度なアナリティクスをサポートし、高機能で、高度に設定可能で、すぐに使えるダッシュボードによって、全ユーザーがIoTデータを最大限に活用できるようなプラットフォームです。

データ統合

IoTデータを活用し、業務効率を向上させるためには、ERP（企業資源計画）やCRMソリューションなど、既存のさまざまなエンタープライズアプリケーションやシステムにデータを統合する必要があります。しかし、IoTプラットフォームが独自の基準やハードウェアに縛られている場合、企業にとって IoTインテグレーション は困難なものになってしまいます。

この課題を回避するには、クラウド、オンプレミスを問わず、IoTエコシステムやエンタープライズアプリとの容易な統合機能を提供するIoTプラットフォームを使用することです。また、プラットフォームがオープンスタンダードで、マシン間通信プロトコルとして OPC Unified Architecture (OPC UA) を提供していることを確認し、アプリケーションから産業機械まで、既存のITやその他のインフラ投資をすべて活用できるようにします。

構築済みコネクタと定義済みのレシピを提供するIoTプラットフォームを導入すれば、事前統合されたエンタープライズアプリやクラウドアプリ間のインテグレーションワークフローを迅速に構築できます。また、 ソリューションは、 データレイク のインテグレーションを容易にし、過去のデータを色々なアプリケーションに統合できなくてはなりません。

IIoTのビジネス課題

ビジネス上の目的

IIoTは、さまざまな新しい機能を実現でき、素晴らしい機能です。しかし同時に、課題のひとつでもあります。接続対象や生成するデータが非常に多様であるだけでなく、その目的も、安全性の向上、コストの削減、生産性の改善などさまざまです。

IoT採用企業の96% が、IoTプロジェクトを成功させるには、望ましい結果を明確に理解することが重要であると回答しています。ビジネスケースを明確に示せるようにしましょう。上級管理職と連携することで、プロジェクトが論理的にどのように機能し、組織のより大きな目標に沿うようになるかを検討することができます。

部門を越えたコラボレーション

IoTプロジェクトには、多くの場合、さまざまな機能にわたる部門が参加します。プロジェクトを成功させるには、組織内の全員が連携する必要がありますが、部門ごとに目標や考え方が異なる場合は、それが困難となります。Beecham Research社 の調査によると、IoTプロジェクトの失敗を経験したほぼすべてのエキスパートが、部門を越えたチーム間の結束力の欠如が失敗の要因であったと答えています。

IoTの新しいプロセスと古い業務慣行との間に生じる摩擦や、変化に対する単純な抵抗など、会社の組織構造によってIoTの取り組みに課題が生じる可能性を考慮しましょう。社内の技術チームと管理チームの間でも、外部のエコシステムパートナーとの間でも、効果的な連携が不可欠なのです。

ベンダーとの連携

IoTプロジェクトの実施は複雑であるため、適切なベンダーとの関係が不可欠です。残念ながら、社内リソースに全面的に、またはほぼ全面的に依存していた組織の大半は、 期待外れのIoTプロジェクトに終わっています。

一方で、外部のソリューションプロバイダーを導入すれば万全というわけではありません。しかし、技術的な指導だけでなく、計画の実現可能性、実施戦略、現実的な財務目標の設定など、必要な専門知識が提供されます。最も成功につながるアプローチは、外部のソリューションパートナーと、IoTの専門知識を持つ社内のプロジェクトリーダーの経験を組み合わせることです。

ビジネスモデルの進化

新しいビジネスモデルへの転換を進める機器メーカーにとって、サービスベースの関係への移行は組織的な課題となっています。 Beecham Research社によると、新しいビジネスモデルの実現を目指している企業のうち、完全に成功したと回答したのはわずか4%でした。

ビジネスモデルを進化させるためには、組織内のすべてのメンバーが新しい顧客中心の考え方を持つ必要があります。幸い、この進化をサポートするように設計されたIoTプラットフォームは、企業が自信を持って転換するために必要なデータを提供します。IoTデータにより、機器メーカーは設計を改善し、ユーザーのニーズを理解し、顧客を最適にサポートすることができるのです。

エンタープライズグレードのIoTソリューション は、IoTによる進化をサポートし、迅速なビジネス成果と持続的なイノベーションを実現できます。

Prior to adopting 機器メーカーはIoT の採用以前は、接続されていない製品を販売し、顧客から問題について問い合わせがあったときにのみ、製品を操作していました。このビジネスモデルでは、ハードウェア収益は減少し続け、顧客のパフォーマンス向上に役立つ新しいインサイトやサービスを提供する上でも不利な状況になります。

しかしながら、IoTソリューションの構築は簡単ではありません。 Beecham Research社 によると、ほぼすべてのIoT採用企業が接続性に課題があると感じています。回答者の87%は適切な専門知識が不足していると、また60%は分析に制約があると感じています。

このようなコストのかかる課題を回避し、 「購入&構築（バイ&ビルド）」アプローチでIoTプロジェクトを加速させましょう。

IoTプラットフォームを購入する際は、導入が容易で（多くの場合にコーディング不要）、デバイスの接続性と管理、 アプリケーションイネーブルメント と統合、ストリーミング分析と予測分析があらかじめ装備されているものを選びましょう。

IoTが簡素化されると、 IoTの成熟度曲線に沿ったユースケースで、差別化機能の構築に集中できます。

IoTの成功への第一歩は、大きく考え、小さく始めて、迅速に行動することです。「アズアサービス」モデルへの移行は、テクノロジーにとどまりません。新しいビジネスモデルの作成は、企業文化を変え、顧客との新しい関係を構築することを意味します。

IoTの成熟度曲線は、機器メーカーが適切な規模の取り組みを段階的に進めて、真の変革につながる成果を得るための指針になります。

1. リモート監視

IoTリモート監視 は、機器メーカーにとって最適な開始点です。リモート監視から得られるインサイトは、顧客にとって最も重要な新製品機能の開発を加速させることができます。

2. スマートフィールドサービス

デバイスが接続されると、IoTデバイスからのデータを スマートなフィールドサービス に活用できるようになります。顧客の機器にどのようなサービスが、いつ、なぜ必要なのかを正確に把握できるからです。これによりコストを削減し、顧客の稼働率を確実に向上させることで、戦略的パートナーとしての価値を高めることができます。

3. パフォーマンス管理

IoTデータアナリティクス を適用して、CX（カスタマーエクスペリエンス）を継続的に改善し、稼働率の向上、エネルギー消費の低減、より安定したアウトプット品質に基づいた、新しい成果ベースのサービスを創出します。

4. EaaS（Equipment-as-a-Service）

IoTの成熟度曲線における最後のステップは、「PaaS（product-as-a-service）」モデルへの移行です。EaaSにより、機器メーカーは顧客のTCOを削減できると同時に、資本集約的な機器の一回限りの製品販売から、より予測可能で継続的な収益を生み出すモデルへと焦点を移行できます。

IoTの取り組みから最大の価値を引き出すには、トランスフォーメーションを促進し、IoTの成熟度曲線をうまく上昇させることができるソリューションが必要なのです。

当社のCumulocity IoTは、最高評価を得ている、迅速なROIを実現できるセルフサービスIoTプラットフォームです。

オープンで独立したプラットフォームであるCumulocity IoTは、現在あるもの、そして将来追加する可能性のあるものと連携・統合が可能です。そして、IoTの取組みのいずれの段階であっても、Software AGは、投資を最大限に活用し、ビジネスに最高の成果をもたらすお手伝いをします。

Cumulocity IoTプラットフォームのストリーミング分析機能は、 Apamaで構築されています。Apamaにより、あらゆるデータ形式のさまざまなライブデータソースから、ビッグデータやファストデータをフィルタリング・集約・充実化・分析して、単純なパターンと複雑なパターンを特定できます。

TrendMiner は、スマートファクトリーとインダストリー4.0の運用に対応した、Software AGが提供するセルフサービス型インダストリアルアナリティクス・ソフトウェアです。センサーで生成された時系列データの高性能なアナリティクスエンジンをベースにしており、プロセスエンジニアやオペレーターが、データサイエンティストのサポートなしで、自身で簡単にトレンドや疑問のあるプロセスデータを検索することができます。生産プロセスの継続的な改善を目指している場合は、ぜひTrendMinerをお試しください。

Cumulocity IoTが選ばれる理由

1. IoTソリューション構築における迅速なROIの実現

自社ブランドのIoTソリューションを構築し、数カ月どころか数週間でビジネス価値を創出します。その方法とは？Cumulocity IoTプラットフォームは、セルフサービスツールや構成駆動型のアプローチによって、物事をシンプルにするのです。

唯一の完全にオープンなIoTプラットフォームでイノベーションを起こして、1つのテクノロジースタックの制約からビジネスを解放しましょう。オープンスタンダードを使用するため、現在と将来のあらゆる「モノ」を接続できます。つまり、独自のハードウェアやツールを持ち込み、ビジネスに最適なコンポーネントを選択することができます。

手順をまた一からやり直すのではなく、強固な基盤上に差別化ロジックやアプリケーションを構築するという前向きなことに集中できます。組織内の誰もが、次のようなCumulocity IoT専用アプリケーションにアクセスして成功に到達することができます。

• OEEアプリ: すぐに使えるモバイルIoTアプリ、パートナーソリューション、当社の OEE（Overall Equipment Effectiveness） アプリなどの洞察に満ちたアプリケーションで、価値創造までの時間を短縮します。
• Digital Twin Manager:パッケージ済みの Digital Twin Manager アプリケーションにより、IoTデバイスではなくビジネス資産を中心にソリューションを作成し、作成したデジタルツインを充実化することで、接続されたすべての資産に関する理解を深めることができます。
• SmartRules: 個々のデバイスやデバイスグループに対して、ルールやアラームを視覚的に定義および関連付け、登録時に自動的にアクティブ化することができます。
• Analytics Builder: 「ポイント＆クリック」するだけでデータサイエンス技術を適用し、IoTデータから最大の価値を引き出します。
• Application Builder: ノーコードで、ドラッグ＆ドロップのアプローチを提供し、ブラウザ内で直接、見やすいCumulocity IoTアプリケーションを作成できます。

2. 拡張が容易な大規模なIoT導入

エンタープライズグレードのIoTソリューションで、一度開発すれば、どこにでも展開が可能です。1つのコンソールから、一括登録や更新などの、デバイスの初期接続と管理が可能です。サードパーティのアプリやシステムをコーディングなしで統合し、OT資産とIT資産全体にわたるアクション、ワークフロー、プロセスを自動化できます。また、クラウド、オンプレミス、エッジなど、必要な場所で自由にソリューションを実行でき、データソースに近いエッジなど、どこでも分析を実施できます。時間の経過とともに変化するニーズに応じて、ビルディングブロックのアプローチでIoTソリューションを容易に進化させ、拡張することもできます。

3. すべての役割にIoTを活用

Cumulocity IoTは、組織内のすべての人材がIoTデータとアナリティクスによって力を発揮できるように設計されています。データサイエンティストは、自分たちが実行できる範囲や内容に満足し、他の人材は、自分たちがデータサイエンティストでなくても問題ないと満足するでしょう。それを可能にしているのは、ローコード/ノーコードオプション、IoTプロジェクトとデータ用の組み込みの専用アプリ、B2B2Xのホワイトラベルとマルチテナントに対する業界をリードするサポートです。

Cumulocity IoTには、あらゆる役割に適した機能があります。製品開発者は、当社の実証済みのセルフサービスIoTプラットフォームで、IoTソリューションを迅速に構築・テスト・拡張できます。フィールドサービスとサポート担当は、サービス収益の増加、SLAの維持、サービス管理チームの有効性の向上を図れます。また、オペレーション技術者は、リモート監視により、顧客のマシンを常に最高の効率で動作させ、計画外のシャットダウンを最小限に抑えることができます。ITリーダーは、オープンで、スケーラブルで、セキュアなソリューションにより、信頼性と革新性の両方を手に入れ、プロジェクト失敗のリスクを最小限に抑えながら迅速に結果を出すことができます。経営幹部は、自社のIoTソリューションがより大きな競争優位性をもたらし、収益性の高い成長への道が開かれることを確信できます。.