日本信号は、安全と信頼の優れたテクノロジーを通じて、より安全で快適な社会に貢献することを使命、すなわち企業目標としています。同社の主力製品やシステムの多くは、人命を保護しながらサステナビリティにも貢献しています。これらには、鉄道・道路信号システムのほか、自動運転、LED式信号機、駅のホームドア、世界初となる遅延証明書を発行できる自動改札機などがあります。
企業目標をさらに追求するために、成長する DX ビジネスを最大限にサポートし、国連の持続可能な開発目標 (SDGs) および ESG 原則との整合性を図るには、業務改善が必要だと考えていました。グループ IT 戦略部課長の長内 進氏は次のように説明しています。「業務効率と業務プロセスを向上させることで、これらを達成できることはわかっていました。しかし、ビジネスのどの部分に最も注意を払う必要があるのかを実際には特定できていない、という問題がありました。」
日本信号は「2025 年の崖」(前述)への対応を機にこの問題にも対処すべく、まず、基幹システムの移行( 旧SAP ECC 6.0 → 新SAP ERP S/4 HANA)に伴い、対象業務の改善も図ることを考えました。後日、長内 進氏は次のように評価しています。
「Software AGのARIS Process Miningはまさに当社が必要としているソリューションでした。
実データに基づくプロセスの可視化・分析およびリアルタイムでのモニタリングにより、主観を排してプロセスの改善ポイントを特定し、改善プロセスの定着度合いをモニタリングができるからです。」
日本信号は、以下を選定のポイントとして、プロセスマイニング市場をリードするソリューション ARIS Process Mining を選択しました。
PoCでは「ARIS Process Miningでできること・できないこと」を整理し、利用する従業員の理解を共有しました。グループ IT 戦略部 課長の長内 進氏は次のように話しています。
「SAPのERP システムは、財務会計だけでなく、販売と購買、生産管理、在庫管理、プロジェクト管理などのビジネスの他の領域にも関係しています。それら複数領域に関係するデータに対して、ARIS Process Mining の操作は簡単であり、デフォルトの設定から当社独自の複雑なアーキテクチャーに対応させることが比較的容易に可能であると判断しました。」
日本信号は、プロセスのボトルネック、作業の重複、ユーザー行動の不規則性の予想・特定を目的として、リアルタイムのデータに基づいて業務プロセスを可視化することから始めました。ARIS Process Miningによって、同社が使用していたビジネスインテリジェンスツールでは検出できなかったプロセスを迅速に分析することができたのです。現行業務のプロセスパターン(プロセスバリアント)の偏りに気づき、それらの違いを把握し、改善に着手しました。
日本信号が、ARIS Process Miningで最初に取り組んだのは販売プロセスでした。プロセスマイニングとプロセス分析により、部門別、ユーザー別のプロセス数と処理時間を可視化することができました。
同社の中核事業の1つである鉄道信号システムは、販売サイクルが比較的長いため、販売処理の時間も長い傾向があります。ARIS Process Miningを使用して処理時間を可視化したところ、平均の販売処理時間は3 か月程度ですが、一部の部門では平均4.5 か月かかっていることが判明しました。
詳細な分析により、案件計画から受注までの初期段階はほとんど時間がかからず、迅速に処理が行われている一方で、受注後のプロセスが非常に長くなるケースが多いことがわかりました。森 雅文氏は次のように述べています。「必要に応じて分析の粒度を調整できることは、データを深く掘り下げて必要な説明を得るうえで非常に重要です。ARIS Process Miningはこれが可能です」
担当部署との話し合いの結果、価格交渉、注文日や納品場所の変更など、注文遅延の複数の要因が特定されました。今後、このようなボトルネックを解消するために、営業部門と相談することが合意されました。
これはARIS Process Miningの重要な機能、「根本原因分析機能」を有効に活用した成果ですが、もう 1つの重要な機能として「コンプライアンスチェック機能」があります。例えば、プロセスの最大処理時間を管理するルールを設定することで、継続的に各事業部門の業務改善を監視し、その進捗状況を測定することが可能です。同社が DX や自動化において大きな目標を掲げる中で、この機能は非常に有効な手段となる可能性があります。
日本信号は、販売プロセスでの成功を受けて、購買や製造などの分野でのプロセスをより深く理解するためにARIS Process Miningを使用する予定です。基幹システムに蓄積された実績データをもとに仮説を立て、前後を比較することで効率化戦略の効果を定量的に測定することが可能になり、どの施策がビジネスに最も大きな影響を与えるかを理解できるようになります。
これは、さまざまなユーザータイプに合わせて簡単にカスタマイズできる ARIS Process Mining の特長でもあります。
2024年同社が最も注力するのはDXです。すでに「DX Ready」の認証を取得しており、2028年の創業100周年に向けて「DX Excellent」の実現を目指しています。鉄道や車の自動運転への取り組みや、高所作業を担う人型ロボットなどを開発中です。
日本は高齢化と労働力不足に直面しているため、このような取り組みは国家経済にとって重要となる可能性があります。また同社は、事業全体で何が起こっているかをより明確に把握するために今後もARIS Process Mining を使用し、オペレーショナル エクセレンスの推進とイノベーションの推進を継続していく方針です。