プロセスマイニングとは?
プロセスマイニングとは、現状のプロセスを深く掘り下げて分析や発見、監視、改善することによって、ビジネスの現状に利益をもたらすための理想的な効率性を明らかにすることです。またプロセスマイニングは、企業内のすべてのプロセスデータを「マイニング(深堀して分析)」し、改善の可能性を探るもので、より効果的かつ効率的な業務プロセスを発見することに重点を置いています。目標は、「人間の介入を最小限に抑えたプロセスパス」を見つけることです。これにより、企業はスピードと正確性を向上させ、チームは可能な限り効率的に最善の作業を実施することに集中できるようになります。
プロセスマイニングの仕組みとは?
プロセスが完了するたび、さまざまなデータが作成されます。たとえば、カスタマーサービスの依頼が来るたび、いつ電話を受け、誰が対応し、どれくらい時間がかかり、問題が解決されたかどうかなどのデータが蓄積されます。 他の例をあげると、レジで購入した商品のタイムスタンプ付きログや、特定の日付に送付された請求書などもそれに該当します。
一般的なビジネスプロセスは、SAPやSalesforce、Oracleなどのエンタープライズシステムにデジタルの記録が残ります。シンプルな分析ツールを使用する場合、このデータを調べて処理し、情報をマイニングすることで、業務に要した時間や、完了したプロセスの総量、誰が何に対処しているかなどの一般的な傾向を把握できます。
ここで登場するのが、プロセスマイニングソリューションです。プロセスマイニングのプラットフォームでは、過去のデータとリアルタイムのデータのすべてをアップロードすることで、ここから得られる知見をDX推進のための業務改善やプロセス改善に活用することできます。
プロセスマイニングツールとは?
プロセスの特定と分析には、特に調査対象となるプロセスデータ量を考慮すると、膨大な手作業を必要とする可能性があります。そこで、プロセスマイニングツールが役に立つのです。
プロセスマイニングツールとは、ERP、CRM、MESなどの各システムにあるすべてのプロセスデータを迅速に分析するツールです。業務のボトルネックや改善の機会を特定するのに役立ちます。また、データの意味を理解するため、その依存関係を把握し特定して、パターン、異常、最適化の機会を見つけることができます。
なぜプロセスマイニングが重要なのか?
プロセスマイニングは、プロセスを発見・監視・改善するので、日常業務を改善するのに重要です。しかし、より広いスケールで言えば、プロセスマイニングが重要なのは、回復力のある成長を促進することで、事業運営をサポートできるからです。
Gartner社の最新レポートによると、プロセスマイニングは、回復力のある成長の重要な推進力となる、事業運営の復元力の構築と維持をサポートします。つまり、人員やプロセス、情報システムを、新たな競合他社や製品、サービス、チャネル、ビジネスモデル、オペレーティングテクノロジーなどのパターンの変化に適応できるようサポートします。
効率化を図り、俊敏に運営し、成長を実現することがビジネスにとって重要である場合、事実に基づいた知見を継続的に、またはオンデマンドで業務に反映できることが非常に重要となります。以下は、プロセスマイニングが事業運営にもたらすメリットの一部です。
- 膨大なデータから隠れた行動パターンを発見する
- プロセス変革プロジェクトを推進する
- プロセスが期待どおりに動作しているかを確認する
- 実データを使用してプロセス記述を強化する
プロセスマイニングによる根本原因分析
機械学習を使用するプロセスマイニング・アプリケーションは、そのデータに基づいて全プロセスの最善と最悪を特定することで、根本原因分析を実施します。重要なビジネスタスクを遅らせているものは何か?プロセスフロー全体をできるだけ早く完了させる、いわゆる「ハッピーパス」はどのようなものか?これらの知見に基づいて、エンドツーエンドのプロセス全体を見直し、リソースを再配分することで、ハッピーパスにより近づけることができます。
プロセスマイニングによる適合性チェック
これらの新たに改善されたプロセスを導入したら、プロセスマイニングを継続的に適合性チェックに活用できます。プロセスマイニング企業は、実行中のプロセスをリアルタイムで分析し、現状のプロセスと理想的なケース(理想のプロセス)とのギャップを特定します。ギャップを特定したら、現状のプロセスと理想のプロセスが最終的に同一のものとなるよう、そのギャップを埋めるための具体的な計画を策定できます。
プロセスマイニングの利用例
プロセスマイニングは、さまざまな業界や部署にわたって応用できる可能性を秘めています。ビジネスにおいてプロセスが存在する場所であればどこでも、プロセスマイニングが役立ちます。しかし今のところ、プロセスマイニングが業務改善に活用されている事例は多くはありません。
- カスタマーエクスペリエンス(CX): プロセスマイニングを利用して、可能な限り最高のカスタマーエクスペリエンスを提供しましょう。解決に時間がかかっているカスタマープロセス を特定し、適切な情報を適切なタイミングで顧客に提供できるようにします。
- サプライチェーン管理 : 物流オペレーションを分析し、サプライチェーンの弱い部分を特定することで、回復力を向上させ、流れを途切れにくくします。
- IoTプロセス改善: 生産における、いわゆるハッピーパスを特定し、スループットと効率を向上させ、コストを削減します。
- 調達から支払まで(P2P): 支払条件の不一致や規定外購買をなくし、調達を最適化します。
- 受注から入金まで(O2C): タッチレスオーダーを最大限に活用し、受注から納品まで(オーダートゥーデリバリー)のサイクルタイムを短縮し、最終的に売上回収のスピードアップを実現します。
プロセスマイニングの5つのカギとは?
- 見る
データとは、数字の羅列した単なる「データ」であり、なぜそのデータ全体を見ているのかを理解していない限り、圧倒されて手に負えない場合もあります。そのデータは何を意味しているのでしょうか?要点は何でしょうか?すべてを理解するにはどうしたらいいのでしょうか? - 理解する
まず、データの意味および内容(処理の遅延やボトルネック、廃棄物の増加、製品の品質不足など)をよく理解し、達成すべき目標を明確化します。そして、その目標と、イベントログから可視化した現状とのギャップを分析します。 - 修正する
プロセスマイニングの真価が発揮されるポイントです。プロセスマイニングの手法およびTo-Be業務プロセス可視化のフレームワークは、達成すべき目標によって決まります。 - 実行する
理想的なプロセスマイニング・ソフトウェアは、どのシステムともシームレスに統合でき、迅速な実行と展開を可能にします。一度「ハッピーパス」が見つかれば、そこから先は坂を下るように、業務フローがはるかに効率的になります。 - 確認する
プロセスマイニング・ソフトウェアの大きな利点の1つが、プロセスの継続的な監視により、目標が達成されているかどうかを確認できることです。この継続的なデータの流れは、非常に貴重なのです。
プロセスマイニングの活用事例
プロセスマイニングは、さまざまな業界やビジネス機能にわたって多種多様の用途があります。ビジネスにおいてプロセスが存在する場所であれば、どこでもプロセスマイニングが役立ちます。
当社Software AG自身がプロセスマイニングを活用した一例として、セールスパイプラインのパフォーマンスとフローの改善が挙げられます。当社は、リード(見込み客)がセールスパイプラインを以前ほど速く進行していないことに気づき、できるだけ迅速に見込み客をサポートしたいと考えました。
そこで、プロセスデータに着目し、スピード低下の根本原因を理解しようとしました。 ARIS Process Miningを使用して、75万件以上のSalesforceのケースを分析し、(1)遅れの根本原因を特定し、(2)プロセスをより適切に自動化できる「ハッピーパス」を見つけ、(3)現状のプロセスと理想のプロセスを比較し、改善の可能性を見つけたのです。
その結果、当社が迅速に対応したリード(見込み客)は、遅れているリードに比べてセールスファネル(見込み客を受注客に絞り込んでいく手法)に進む可能性が7倍も高いことがわかりました。この知見を念頭に置き、最初のフォローアップに割り当てるプロセスとリソースを見直したところ、主要市場でコンバージョン(サイトで獲得できた最終的な成果)が20%改善されました。
今後のプロセスマイニングへの期待
昨今のビジネス環境は絶えず進化しており、組織は顧客の期待、競争、規制、費用の変化に適応しなければならないという強いプレッシャーにさらされています。COVID-19のパンデミックにより、常に迅速に進化しなければならないという圧力はさらに高まりました。組織は、今日のビジネス環境において、従来のやり方はもう通用しなくなっていることに気づいています。
その結果、リーダーたちは社内のプロセスや働き方、そしてクライアント、パートナー、サプライチェーンが関与する社外のプロセスの崩壊に直面しました。より小さい規模では、人々はさまざまな方法でコラボレーションするようになり、パターンの変化や新たに構成された機能に適応できるシステムの必要性が高まっています。
変化し続ける環境の中で、組織は将来的に生き残るために、より回復力と俊敏性を高めることが求められています。そのため、組織は、現在および将来にわたって効率的かつ正確に業務を再構築するために、プロセスの発見と分析に対する事実に基づくアプローチによるプロセスマイニングのテクノロジーをさらに活用するようになっています。
プロセスマイニング用語集
タスクマイニング
あらゆる種類のユーザーインタラクションデータを取得して、分析と改善を詳細なレベルで行うテクノロジー。プロセスマイニングの中核的要素。
エンタープライズマイニング
より広いスケールで、企業全体の正確なプロセスの発見と分析を提供するために設計された、一元的なプロセス最適化拠点「センターオブエクセレンス」によって、プロセス改善を誰にでも利用できるようにすること。
データマイニング
パターンを特定、記述し、新しい傾向を発見するコンピュータ化されたプロセス。プロセスマイニングも同様であるが、独自のアルゴリズムでデータを分析、分類し、より優れた理解と視覚化を実現する。
ビッグデータ
大規模なデータセットと、それらのデータセットを処理するために提供可能にするBI手法の実装と、その技術的プラットフォーム。
ビジネスプロセス ディスカバリー
基本的なプロセスマイニング手法であり、プロセス検出のためのアプローチ。詳細な可視化と把握を容易にし、最適な成果を得られるようにする。
プロセス分析
ビジネスの理解の向上、プロセスの改善および最適化のための基礎であり、あらゆる構造を詳細に分析し、パフォーマンスを表示する。
プロセス改善
業界または垂直市場における競争力を強化するために、既存のビジネスプロセスを最適化すること。
適合性チェック
基本的なプロセスマイニング手法で、「適合」または「変動」として選択されたモデルでシミュレーションされたケースによる期待値に応じて、イベントログの適合性を判断する。
根本原因分析
潜在的な不具合を発見し、その根本原因を特定し、不具合解消のための対策を講じること。
プロセスエクセレンス
一貫したポジティブなアウトプットを実現し、価値を創出して顧客に提供すること。
オペレーショナルエクセレンス
社内プロセスだけでなく、カルチャーや人、リソース、システムなどの他の側面も含めて、それらが最適に連携することで、一貫した前向きなアウトプットを実現すること。
プロセス最適化
社内の業務手順を改善し、ドキュメントを検証することで、ワークフローを最適化し、弱点を明らかにし、コストを削減し、品質を向上させること。
ロボティックプロセス ディスカバリー
プロセスディスカバリ・ソフトウェアアプリケーションで自動化し、プロセスをマッピングし、自動化の適合性を評価し、ワークフローを生成する方法。
RPA (ロボティックプロセスオートメーション)
一般的にRPAと呼ばれ、人間の対話を模倣した、繰り返しのルールベースの基準を使用してプロセスを学習・自動化・最適化するソフトウェアアプリケーション。
ビジネスプロセス最適化戦略
ワークフローの生産性を向上させるためのプロセスの改善と最適化に向けた枠組みや方向性を示すもので、分析完了時のサブプロセスの省略、結合、分解もそれらに含まれる。